4画面の雑記帳

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高野和明「13階段」を読んだ

死神は、午前九時にやって来る。

 

13階段 (講談社文庫) | 高野 和明 |本 | 通販 | Amazon

 

高野和明13階段」を読みました。

本作は仮釈放中の前科者と刑務官がタッグを組んで、執行確定間近の死刑囚にかかった冤罪を晴らすべく奮闘するミステリー作品。読み進めていくとすぐに出て来る話題ですが、現行の死刑制度に多彩な視点から疑問を投げかけ続ける構成になっており、単なる推理小説の域を超えた逸品と感じました。

登場人物もそれぞれが死刑に関わる側面を持っており、主役格の2人を見ても殺人の罪で服役後仮釈放中の青年三上、過去に2度の死刑を現場で執行した刑務官の南郷と真反対の立場からそれぞれが死刑制度に対して苦悶する様は自分の認識を大きく揺さぶるには十分でした。言葉としての死刑制度はもちろん知ってはいますが、事件発生から訴訟、抗告、判決確定のみならず、そこから誰がどのような承認を経て死刑執行のGOサインを出すか?

恥ずかしながら自分はそのプロセスを考えた事すらありませんでした。

 

読み終えた今になってあらためて振り返って見えると、話がコンパクトにまとまっている様に見えて意外と登場人物が多い。それだけ死刑制度や刑執行に関する考察と描写が丁寧で、立場の数だけ事態の見え方が変わる描写方法が単なる謎解きだけにとどまらない魅力だったかと思います。

 

ミステリーとしての謎解き的な面白さもさることながら、個人的にぞくっとしたところを1点挙げるとするなら第五章最後の一文、具体的にはP.304をめくった瞬間のインパクトが忘れられません。

これが文庫化に当たって調整されたものなのか、偶然の産物なのかは分かりませんが、物語が急展開を迎え、最重要証拠とも呼べるキーワードがいよいよ明らかになる。まさにその瞬間を狙って本文はページを跨ぎ、めくった先には極々短い文字列、しかも物語の流れを大きく変え得る重要な文字列が並び、以下余白。次のページから第六章に移るという構成でした。

 

ん~~~!構成がうめぇ~~~~~!!!!

 

著者は元々映画やテレビの脚本家・撮影スタッフの経歴を持ち、本作執筆後には自身が映画監督をも務めるなど映像のプロでもあります。小説と言う文字媒体でありながら音や映像が "視える" ような不思議な感覚。登場人物に感情移入して物語中を練り歩くのではなく、あくまで第三者視点から物語の顛末を眺めているような感覚は慣れるまでに多少時間がかかるかもしれませんが、慣れてきた頃にはいい意味で嵌められているころでしょう(笑)

 

起承転結がしっかりしているのもあって読後感も充実した良い作品でした。未読の方はぜひどうぞ。

 

ではでは