かつてフォスだったもの...。
本日発売の「宝石の国」12巻を読みました。
ネタバレ有り注意!
「読む地獄」「地獄の釜の蓋が具現化した本」などでお馴染み(?)の宝石の国ですが、前回11巻のラストで登場した流氷に関する話題から再開。
地上では冬になると流氷が押し寄せ宝石たちの冬眠を妨げており、これを砕く冬の当番は重要な役目でした。物語的にもフォスの両腕を流氷が砕き、結果的にアンタークを喪失、明るく楽天的な性格を明確に変えてしまう程のトラウマを植え付けた序盤の転換期に欠かせないファクター。そんな流氷の正体はなんと...
金剛の兄弟機...でした...。
兄弟機?
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兄弟機って何???
????????????
もうちょい正確には人間が作った金剛の先代機で、隕石の飛来予想を意図的に外して衝突させ地上の主権を人間から取って代わろうとしたいわゆる独立暴走AIのような存在でした。後継機の金剛には厳しすぎる制御が施され、人間側にも機械不信が生じた所へ立て続けに隕石が降り注ぎ滅亡に至ったとか。。。
人間が滅亡した後も兄機の意志は薄弱ながら海を漂い続け、今も流氷の形で冬の海に現れては月人軍の形を模して復活の協力を求めている、というのがバルバタからの説明。これは個人的に結構な衝撃でして、遥か昔に存在した人間から派生した3つの種族(骨=宝石、肉=アドミラビリス、魂=月人)と金剛以外にはクラゲ、昆虫(少なくとも蝶は出て来た)、植物くらいしか登場していなかったのでここへ来ての新キャラ登場。後の展開にも繋がってきますが、人間の作った道具を自認しながらも宝石に対する情念を抱く金剛と同じく兄機にも機械的なプログラム以上の意志があるようです。
自壊したくてもプログラム的にそれが許されていない金剛 vs 壊されてなお復活の意志を燃やし続ける兄機。冒頭からだいぶブチかましてきましたねぇ…。
さらには月人の成り立ち(最初期)から現在に至るまでの経緯、エクメアの過去と本名までが語られて舞台は再び地上へ移りフォスの宝石殲滅戦が始まります。
対話を求めるユークを無視して横一線に薙ぎ払い、堅牢のジェードを学校の柱に叩きつけて粉砕。最後に相対するのはかつて楽しい仕事を探してみせると約束したシンシャ。毒液を垂れ流し続けてしまう彼の特異体質に対し、フォスは「楽しい仕事」を見つけて見せると宣言。フォスにとってシンシャは初めて能動的な希望を見出した相手であり、アンタークの喪失や月人との接触から成長を遂げてフォスなりに自信を持った月への移住提案を「楽しいが抜けている」と切り捨てて精神崩壊の最終の一押しをした相手。
激戦の末にシンシャを降したフォスは既に約束の事も忘れており観ているこっちが辛い状況。流石は読む地獄...(´;ω;`)
しかし地獄はまだまだこんなものでは無かったとばかりにシンシャを合金の要領で取り込んでしまい容姿が変貌。さらには金剛とエクメアの繋がりが発覚し、金剛が担う祈りの装置としての機能を引き継いでしまったフォスが人間を超越した存在へと成り果てていきます。祈りの機能が正常にインストール&セットアップ完了するまでの推定期間は一万年。ふふっ、ヤバイ()
一万年の間にフォスは金剛から引き継いだ記憶をリピート再生しつづけ、金剛を作った母(博士)の意志を知ることに。記憶に残るアユム博士は傲慢だと認めつつも、人間の滅亡後には今まで生命として数えられず、一方的に利用され続けた無機体の世界が来ると言います。ここでいう無機体とは金剛の様な機械ではなく宝石たちの様な存在をイメージしているのでしょうが、読者視点では月人と金剛に利用され続けてきたフォス自身こそが博士の信じた無機体なんだよなぁという考えたくもない事実が。当然この内容はフォスの脳内で無限リピートされています。一万年も...。
しかも人間から無機体世界への橋渡しが済んだら「橋は燃やして」と呪いまで吹き込む始末。助けてくれ ( ノД`)シクシク…
そのころ月では天才研究員のアメちゃんが「宝石を月人化するマシーン」を開発!流石はアメちゃん!!
どうやらこの装置、宝石の記憶を引き継ぐインクルージョンから情報を抽出し、月人と同じ組成の体に入れ直すようなものらしいです。詳細な描写は無いものの、一万年かけてどうやらアドミラビリスも月人化を遂げたようで、12巻に収載されたラスト98話では体組成が月人化した3族が覚醒フォスの前に集結。無に至るためのパーティまで開いています。
ここは特別版に付属する「宝石と月人、宴の記録 The Party At The End」を読むとびっくりするほど解像度上がるのでマジでお勧め。
新しい月人としての器で復活を遂げ各々の個性を伸ばしていった宝石たちに対し、一万年の地獄を過ごした地上のフォス。一万年の時を経て容姿はさらに変貌を遂げ、光輪を背負い、全身真っ白でつるつるした印象を持つ独特のフォルムへ。
眼前の3族に対し、太陽フレアに放り込むんで永遠の終りの無い再生の苦しみを与えることもできると伝えた上で「無に至る」ことこそが互いの願いだと神フォスは説きます。
「やっと解り合えましたね」
「さようなら」
金剛の持っていたであろう祈り(魂ごと消し去る業)で全体が光に包まれたところで12巻は終了。え、ここでお預けくらうんですか???何万年待てばいいのでしょうか()
この終わり方で気になった事がいくつかあったので書き出しておこうかと。
①壊れた金剛の祈りはどんな機能だったのか?
エクメアの説明を鵜のみにするならば、壊れた金剛が一度祈れば人間由来の3族は区別なく等しく消滅するだろうというものでした。月人の消滅という意味なら壊れる前の魂の消滅と同義に思えますが月人以外の2族は物理的な器を持つため、物質的にも破壊機能があるのか気になります。
アドミラビリスと違って宝石の器は腐ることもないでしょうし、その場で物言わぬ無機物になって倒れるのでしょうか? それともアドミラビリスは人間の肉として、宝石は人間の骨としてそれぞれの要素が消滅していたのでしょうか? 今となっては3族全てが月人の組成になっているので分かりませんがちょっと気になりました。
②神フォスの使った光は壊れ/正常金剛と同じものか?
対象が人間だろうと人間由来の3族だろうと、それを完全消滅させる機能に変わりはなかったのでしょうか?描かれるなら次の99話になるのでしょうが、何が起きるかによって遠くないであろうエンディングまでのルートが大きく変わってるかと。通常機能として消滅するルート、人間由来の3族がまとまって再度人間が産まれるルート(ただし地上は荒れ果てている)、神フォスに取り込まれて超越種になるルート。適当に3つほど上げてみましたが何でもありだと思います。うーん、わからん。
③祈りの対象外がいるのでは?
冒頭でも触れた金剛の兄機(現在の流氷の意志)はそもそも金剛と同じく人間に作られた機械なので対象外かなーと。全てが滅んだ後に無事地上の主権をGETできるかもしれません。ただし機械のはずの金剛が月人化できているので兄機も対象内と考えることもできる。判断が難しい。
次に昆虫や植物の類。これは地上環境自体が絶望的に悪いのであまりなさそうですが、彼らが次の世界に君臨するルートも無くは無いかも?
それと過去に月人にさらわれて6つの月へ砂として撒かれた宝石たちもインクルージョンだけ純度の高い氷の層から回収できれば月人組成で復活できましたが、復活できなかった何人かのうちにラピスラズリが含まれます。エクメアに適度な天才は猛毒と言わしめた彼は頭脳明晰で探求意欲満載、かつてのフォスに頭部を丸ごと接合した関係で必要なインクルージョン量が足りずに復活ならず。1度はフォスに重要なアドバイスを授けた彼であれば物語を再び動かし得る...かもしれません。
同じく聡明なキャラクターとしては吐き出した水銀の形でフォスに取り込まれたシンシャ。ラピスに対して物語の重要キャラ度で言えば段違いに高いため、祈りの対象から神フォスが除外されているなら1チャンあるかもしれません。ただしシンシャ本体は月人化しているので望み薄かも?
④一万年の間に月サイドができることって何?
これはユークが発した「彼(フォス)の為にできることはもうないの?」という問いに対してエクメアと金剛が明確に「ある」と発言している部分に対して。流石にパーティ開こうってだけじゃないと思うので何かあるんじゃないでしょうか?
これまた個人の勝手な推測ですが、11巻の特装版特典小冊子は外宇宙のとある星が月人との交流に成功し、その調査報告をまとめた1冊という体裁になっています。
本文中には「第510回調査」などかなり長期間に渡った交流がありそうな文言も出てきており、神フォスが感知できない外側の存在からアプローチしてもらうルートもあるかもしれません。それがいい方向へ向かうかどうかは別ですが...。
こんなところでしょうか?
単行本派なので本誌勢に対してまだまだ読み込みが足りない部分があるとは思いますが、最新刊を読んでみての感想・考察でした。何かのお役に立てれば幸いです。
ではでは
追伸:特典カードのフォスが最高にイカレてて一周回ってもう好き()