4画面の雑記帳

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こるせ「きみと世界の終りを訪ねて」を読んだ

綺麗に単行本1冊にまとめ上げられた "終り" へと進む旅の話。

 

きみと世界の終りを訪ねて - こるせ(著者)|一迅プラス

 

こるせ「きみと世界の終りを訪ねて」を読みました。

先日読んだ同じ作者の「わたしたちの終わりと」があまりにも感性に刺さったのでぜひ読みたいと手に取りましたが、これは読んで良かったと自信をもって言える素晴らしい作品でした。

「わたしたちの終わりと」感想はこちら↓

4gamen-blog.hatenablog.com

 

本作は人類文明崩壊後の世界を描くポストアポカリプス系の作品。上で紹介した「わたしたちの終わりと」では特に理由なく(?)滅んだ後の世界の話が描かれていましたが、こちらは異なる複数の視点で物語を描くにつれて世界が滅んだ理由が紐解かれていくタイプの構成になっています。

収録されている4話できっちりと完結しており読み易さは抜群。1話ずつが読み切りとしても充実した内容になっているため、通しで読み切った後の充実感がとても良い!

登場人物は少ないものの、その内訳は人間・クローン・アンドロイドと多岐にわたり、それぞれの視点と役割から最善の行動を選んでいく過程が好きですね。この世界ではクローンやアンドロイドも人間と何一つ変わらない感性をもっているため、マザーAIに支配された管理社会や感情を持たぬロボットのような描写はありません。エネルギー源や体の構造、汚染環境への適正、目的や優先順位などは異なるものの、そこにいるのは各個人が意思をもった平等な1個体といった感じ。

人類文明が滅んでいく背景や過程にも多くの設定があるものの本編中ではメインに据えず、主要人物達の感情にフォーカスした構成に徹しているのも読み易さの重要なポイントだったかと。それでいて最後まで読み切った人だけがたどり着ける歴史年表の形で全容が事細かに記されているのもワクワクしますね~。マンガだからこそ描ける表現と、文章だからこそ描ける表現の良いとこ取りしてる構成が素晴らしい。少なくとも僕は大好きです。

 

 

ここからはちょっとだけネタバレありの話を…。

 

 

エレーナがマドカへ渡したデータチップに衛星停止プログラムが埋め込まれていたことを考えると、EPFによるテロと破壊工作が無かったとしても衛星の制御が困難になる可能性を高く見積もっていたと思われます。仮にエレーナ達本人が天寿を全うするまで衛星が無事であったとしても、運悪く衛星が暴走した時代を生きる人類に対して誰が責任をとるのか?2年の納期が急に3ヶ月になったんだから文句は言えんでしょ、と突き放すこともできたはずですがエレーナは最後まで自分で責任を取ろうとしたのだと思います。

その考察材料の1つが「MAMA」からスペランツァに伝えられた情報量の少なさ。

クローンとして生まれたスペランツァは「天気を操る機械が事故を起こした時に作った人が死んじゃった」「その人にしか機械が動かせなかったから私が作られた」と衛星を作った人(=エレーナ)が悪者のように伝え聞かされています。これがMAMAの判断なのかエレーナが組み込んだ指示or情報だったのかは分かりかねますが、意図的に責任をエレーナ本人に結びつけるような意図を感じます。

また、「記憶移植を受けてもクローンには感情までコピーできない」「思い出は数年分しか移植されない」「思い出の空白を埋めるために仮想記憶をつなぎとして植え付ける」といったこの世界でのクローンの在り方も考察材料になりそうです。

特に仮想記憶を植え付けるというのはエレーナ悪者説を信じこませるのに打って付けの方法で、エレーナ or/and MAMA がクローン体に罪の意識を与えたくなかったのではないかと僕は考えています。

 

気象衛星の停止がアンドロイドの全停止とセットになっている以上、本作の世界では世界の在り方を決める一手になることをエレーナは承知していたでしょう。もちろん研究開発に取り組んだマドカ含む104名のスタッフたちも知っていたかも。そのうえで将来的に衛星が暴走した際の対処プログラムを生体認証という形でその時代を生きるニンゲンに選んで欲しいというのが願いだったんじゃないかなぁ...。

ミミやユユがかつて滅んだ人類を旧人と呼称するように、クローンは人間っぽく見えるけれど人工的に作られた存在で寿命もやたらと短いらしい。そんな彼女らに生物として自ら考えて判断する最終決定権を委ねたのは、エレーナやマドカ達が自らの分身であり娘でもあるクローンに残してやれた唯一の救いだったんだと思います。

ラリベルタとユユが家庭型アンドロイドだったのも大きいですね。まぁ普通に考えて軍事用アンドロイドも居そうな世界ですから、スペランツァやミミを支えるパートナーが心優しい彼女らであった事でさえも奇跡だったかも。

 

年表によれば2961年に軌道エレベーターの再起動が確認されたようですが、スペランツァとラリベルタは無事に月へ移住できたのでしょうか?また、衛星が再起動した2962年から20年後の2982年に死亡した最後の人類は心穏やかに逝けたでしょうか?

願わくばその最期の時まで大切なパートナーと共に居て欲しいと願うばかりです。

 

こるせ先生、素敵な作品をありがとうございました。

次回作の構想があればそちらにも多大な期待と応援をしております。

 

ではでは