4画面の雑記帳

思ったことをつらつら書いてく雑記帳

アガサクリスティー「そして誰もいなくなった」を読んだ

名作には名作なりの構造があるんだな、って。

 

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英国の生んだミステリーの女王、アガサ・クリスティーの作品の中でも傑作として知られている「そして誰もいなくなった」を読みました。

「なんで今?」って聞かれても「気が向いたから」くらいの答えしか返せないのですが、敢えて言うなら古典を読みたいと思ったからでしょうか。30代も半ばになろうとしているのに、これまでの人生でほとんど活字を読んでこなかったなと最近思うようになりました。復職タイミングが延びて図書館通いが続いている唯一のポジティブ要素ですね...。

思い返してみると小学生の頃から読み物としては主にマンガで、図鑑みたいなものを読み漁るのは好きでしたが小説などを読んだ記憶がほとんどない。大学院時代は飯を食いながら論文を読むような生活をしていたので娯楽とは何か?みたいな状態に...。院生時代の娯楽は徹夜する日に食べる塩バターラーメン大盛りだけです()

マンガが小説に劣るとは全く考えていないものの、やはり広がりに欠けている感は否めません。映画だったり舞台だったり音楽だったりと表現媒体は数多くあるので、色々な媒体に触れる機会を持っておくこと自体に損は無いのかなと。そんな時、かなりの読書家だった高校時代の友人が「古典を読め」と言っていたのを思い出しました。15年くらい前の話ですが急にその言葉を思い出し、彼がいくつか勧めてくれた(結局読むことは無かった)本の1冊が本書「そして誰もいなくなった」でした。

 

内容は知らずともタイトルくらい僕でも知ってる傑作ミステリー。当然のように図書館にも置いてあったので手に取ってみました。

 

めっちゃ面白い!

そして何より読みやすい!!!

 

15年前の友人よ、すまんかった。お前の言いたい事が今ようやく分かった気がする。

本作の内容・登場人物の関係などには触れませんが、読了直後の感想としてはページをめくる手が止まらないテンポの良さ、再び読み返して確認せずにはいられない丁寧な伏線の構造的美しさには圧倒されました。

ミステリーというジャンルの特性からか、地の文章には登場人物の思考・感情や動きに関する描写が多い一方で、風景描写などには多くの修飾語を用いずに簡潔でスリムな表現に留めてある点も読みやすさのポイントだったのかもしれません。それでいて10人もの登場人物に関する動きや思考は重厚、かつ、必要十分なギリギリの情報として与えられる展開が素晴らしい!僅か1章で10人が1つの島に集まった経緯を描ききる導入部分だけを見ても見事というしかありません。どうやったらこんな情報量を圧縮できるの???

また、10人連続の殺人事件でありながらグロ描写や専門知識に頼ったトリックが無く、徹底して登場人物の思考と行動だけを描写しつづけている点もテンポの良さに繋がっているのかな、と。全ての犯行は体力や性別に関わらず全ての人物に可能なものであり、死者が出ても割と淡泊というか単にそういうイベントが発生したという事実を描くに留めているのがなんとも大胆だとも感じました。主人公としての探偵役がいないため、各人物の視点を転々としながらもストーリーは着実に進んでいくのが凄い。最後の最後まで読者が一緒に考えられ、それでいて種明かしが簡潔。なるほど読みやすい訳だ。

 

高校時代の友人が「古典を読め」といった理由の1つは、より多くの人に支持され、より多くの批判に耐えきった作品に触れて基本構造を学べという意味だったと勝手に解釈しています。本作の初版が1939年なので今年で83年目。何をもって古典とするか詳しい定義は知りませんが、人生1周分ほどの時間が経っていれば十分古典と言えるのではないでしょうか?

 

1世紀弱経っても色褪せないミステリーの傑作「AND THEN THERE WERE NONE(邦題:そして誰もいなくなった)」。とても面白かったです!何かお勧めの本があったら教えて下さい。

 

ではでは