わからないっピ...。
本日発売のタイザン5「タコピーの原罪(下巻)」を読みました。特典があるとは知らずに書店に入ったのでちょっぴりお得感あり。
無銭飲食決定版!4年1組 東直樹 委員長監修(えぇ...)
上巻の感想はこちら↓
Web連載からコミックス上下巻発売まで怒涛の勢いで駆け抜けた本作「タコピーの原罪」もここで一区切りと言った感じでしょうか?掛け値なしにいい作品だった。
上巻ではショッキングな出来事の連発により読んでいる自分自身が見落としがちだったものの、下巻ではさらに強くタコピーが主張し続けた「お話」の必要性について少し考えてみました。
よく「子供は残酷」なんて言葉を耳にしますが、本作にはこうした無邪気・無垢・無知などに由来する残酷性を拡大解釈し続けた結果が全て詰まっているように感じています。
典型的な描写としては無邪気さ・無垢さゆえにに虫や小動物を痛めつけ、無知ゆえに鋭い言葉で相手を突き刺すと言ったシーンを想像しますが、現実世界で小学生同士のいさかいが殺人にまで発展するケースは多くありません。誰かが途中で止めるだろうという無責任な期待はあるかもしれませんが、そもそも蟻のような小さな虫と違って同等スケールの相手(人間)を殺傷することが物理的に困難という問題があります。また、人の罪は「法が裁く」という法治国家のシステムにより、仮に殺っちゃったとしても相応の社会的ペナルティは避けられません。
では物理的課題がクリアされ、法的措置もすり抜けてしまうような状況が整ったらどうなるか?
こうなります...。
まともな倫理観の働いていた当時の東くんもこの表情。
タコピーがいなかったらしずかちゃんが自殺するルートに入るこの状況自体が常軌を逸しているのは間違いありませんが、事の顛末に無頓着すぎるしずかちゃんはやはり恐ろしい。何が恐ろしいって、次の瞬間ターゲットになるのが自分であっても何ひとつ不思議ではない状況が恐ろしすぎる...。
101回のループを繰り返したタコピーや読者の目線からみれば、しずかちゃんは自分の命というこれ以上ない対価を天秤に載せた「無敵の人」。しかもハッピー道具の使い方次第では物理的問題も法的問題もくぐり抜けてしまい得るし、下巻では実際に使いこなしてしまった。ここまで来ると目の前にいるのはもはや小学4年生の女の子などではなく、真顔で銃を突き付けながら「お願い」してくるヤベー奴だ。
それでも物語の背景を知っている我々読者はしずかちゃんだけが一方的にヤバいでは無いことも知っている。
地獄Yeah~~!!()
3人の家庭は親同士のまともな会話は全く無く、自分が受けた仕打ちを子に繰り返し、子同士でまた別の争いを起こす地獄絵図。この環境で聖人してる潤也は何者なの...。
第1話から加害者側でスタートしたまりなちゃんも自宅(雲母坂家)では完全に被害者の1人。コンブチャを...どうして無くなる前に楽天でまとめて注文しないの?ママにはこんな安酒がお似合いかな?怖すぎるっピ...。(※注:コンブチャは密造酒の事です)
まりなちゃん程のトラウマは無いものの、僕自身が先端恐怖症を持っているのでガラスだったりペンだったりを突き付けて来る描写マジで怖いです。1m先に座ってる人がペンを向けて来ても眼球直前5cmに突き付けられてる感覚と言えば伝わるでしょうか?まりなちゃんママがキレッキレ過ぎて実際にどのくらいの距離まで詰められたのかもう分かんねぇな!!!!
こんな荒れ果てた環境で「おはなしがハッピーを生むんだっピ」とか煽りまくってるタコピーが一番真っ当なこと言ってそうなのビビりますね。タコピーはタコピーで「おはなし」の意味を理解していない罪があるんですけど()
「子供は残酷」の件に戻りますが、虫は殺してもいいのに人を殺しちゃダメなの?って聞かれると哲学の領域になってくるので答えに困ります。危害を加えてくる有毒生物だったら積極的に駆除する場合もあるでしょう。美味しいから、綺麗だからという理由で絶滅させた種も残念ながら珍しくはありません。スケールの問題にしても道具を使う人間にとっては大した問題では無くなってきた面も大きいかと。
最終的には同種族同士での殺し合い(=他殺)や、自ら命を絶つ行為(=自殺)は何故ダメなのか? お、タコピーの話題らしくなってきたなぁ...。
これは完全に持論なのですが、「自分が殺されたくないから相手を殺さない」くらいの所に落ち着くんじゃないかと思っています。うーん、性悪説かなぁ...。本作には潤也という性善説の塊みたいな存在がいるので、人は生まれながらにして悪とも言いきれないのですが、パワーバランスが崩れると一気に攻撃的に成り得る世界ではあったと思います。
・まりなちゃんのしずかちゃんいじめを許容するクラスメイト
・しずかちゃんの犯罪をほう助してしまった東くんとタコピー
・あずまクリニックの噂を瞬く間に町中へ広める住人
・誘拐事件に対して父親無責任論を煽るSNSの住人
1対1なら起きなかったかもしれない争いが、第三者の加勢によって大きくパワーバランスを崩し、誰もが加害者で誰もが被害者となる構図を作っていたのかな、と。バッファ無しに連鎖してしまった攻撃性は、巡り巡ってどこかの世界線の自分を殺してしまうのが皮肉ですね。
作中では潤也と最後のタコピーだけが何も押し付けることなく相手の話を聞くバッファの役割をしています。タコピーに関しては上巻ラストとなる第7話「タコピーの告解」で告解=罪を告白し許しを受ける≒懺悔によって形式上の罪を清算できて初めて聞き手側に回れるだけの余裕が生まれたのかなと。余裕が無い人間に愚痴はNGですからね…。告解なしに聞き手に回れる潤也は聖人()
『離れてしまった家族やもう戻らない心、もうきみを見ないママにきみだけの物じゃないパパ』
最終話のモノローグの一節にあるように、実のところ作中で発生した個々の問題は何一つ解決していません。それでもそれぞれが少しずつ、どこかの世界線の自分を殺してしまわない程度に少しだけ圧力を逃がす方法が「おはなし」だったのかなと思います。
こんな事を考えながら下巻を読み進めた次第でした。
つい先ほどになりますが、第1話のボイスコミック化が発表&公開されたみたいです。
タコなのにハムスターみたいな声が聞こえるのだ!へけ!
「タコピーの原罪」下巻発売記念🐙
— 少年ジャンプ+ (@shonenjump_plus) 2022年4月1日
1話をボイスコミック化!
連続プレミア公開の予定です。
4/4
22時〜 1話前編https://t.co/bsiw2xUS91
22時30分〜 1話後編https://t.co/kkuaMvwfRy
タコピー
cv間宮くるみさん
しずかちゃん
cv上田麗奈さん
※チャット欄では未読の方へご配慮をお願いします。
自分でもびっくりするくらいのめり込んだ作品になりました。
あらためてタイザン5先生、すてきな作品をありがとうございました!
ではでは